この絵本の原話は、当初、私が最も「絵本」に描きたい中国民話の筆頭として、中国民俗研究の第一人者:
君島久子の民話集 等より私自ら選出したお話です。絵本の文は、中国語翻訳家・茶芸師である宝迫典子(ほうさこ のりこ)によって絵本用に新たに中国語原文から翻訳されたもので、中国の少数民族・ミャオ族に伝わる民話〈出典参照〉を元にしており、原話の題名は「花辺姐姐(ホワビエン ジェジェ/花辺 姉さん)」です。絵本の編集は、質の高い絵本を多く手掛け数々の絵本賞を受賞している、今、最も注目すべき絵本編集者の一人の、鈴木加奈子によります。
絵本原画制作は、2週間の現地取材(2008年4~5月/中国貴州省・広西チワン族自治区)に始まり、約2年9か月間(2012年3月~2014年11月)の第1期〈君島久子 文〉原案作成・ラフスケッチ(ダミー)制作、約9か月間(2021年10月~2022年6月)の第2期〈宝迫典子 文〉原案作成・ラフスケッチ(ダミー)制作と、約2年間(2022年2月1日~2024年1月21日)の本画制作を経て完成しました。取材~原案・ラフスケッチ制作~本画制作を全て合わせると、
約15年10か月間という、私(後藤 仁)にとって最も長大な企画・制作の絵本作品となりました。
本画制作では、日本の伝統画法の「日本画」を用いて、丹念に描き上げました。和紙・墨・岩絵の具・金箔 等を用いる、1000年以上前から伝わる描き方で、描きこなすには永い経験と高い技術が求められます。日本画の魅力は、日本人・東洋人の感性に合った落ち着いた色調の美しさや、墨による線描きの表現 等が挙げられます。ただ、現代日本画画壇には、閉塞性・内向性や保守化・権威化・没個性化・画一化・低質化に加えての、時代の変化による世間的な日本画人気・認知度の著しい低下といった多くの諸問題が存在します。日本画家による絵本原画制作の意義とは、それらの諸問題に対する私なりの打開策でもあり、「物語絵ジャンル」が実質的に消滅した現代日本画界における新たな「物語絵」の表現手段の模索でもあります。
作画には、今まで私が描いた絵本中では最も長い時間をかけ、極めて細密・緻密で丁寧・繊細に描いています。かつ、場面によっては大胆な構図や描法も交え、多彩な絵画表現の可能性を模索しています。とても高価な純金箔・純金泥(純金粉)・純銀泥(純銀粉)や、天然岩絵の具 等の高品質な画材を多用した、誠に贅沢で本格的な美術絵画・アート作品に仕上げました。
この絵本は、「絵本画」としては尋常でない程の時間と手間をかけて凝りに凝った作画になっています。短時間で描いたイラスト・マンガ カット集のような絵本や、素人・アマチュア的な絵本や、CG・AI画ばかりが世の中に氾濫し過剰にもてはやされる昨今・・。創作者であるのにもかかわらず、容姿の良さやパフォーマンス・自己アピール・話術が上手い人ばかりが流行る現代社会・・。そのような、コストパフォーマンスが良くて、とにかく売れれば良しとする営利第一主義的な各種業界風潮に対する、私からの明確なアンチテーゼでもあります。その真意とは、次世代を担う子供達には、その短く大切な幼少期にこそ、
丹念な手描きによる心のこもった「絵本」・・・本当の
「“絵” の本」を見せてあげたいな~、という私からの切なる思いであり、真心の贈り物であるのです。しっかりとした研究・取材を重ね、長年磨き続けた技術と感性によって、最高品質の画材を用い、精魂・丹精を込めて、精細・緻密に手描きで描かれた、
本物の「絵本」を・・・・・。
絵本に描かれた「ミャオ族」は、中国の少数民族の中でも、一際きらびやかな衣装(銀細工・刺繍 等)と華麗な民族舞踊で知られています。古来、文字を持たない「ミャオ族」は、歌や踊りと共に、銀細工・刺繡 等の手工芸品に描かれた文様を、親から子へ・子から孫へと伝える事で、民族の風習やアイデンティティを伝えてきました。「ミャオ族」は東南アジアでは「モン族」と称され、
日本人のルーツ(祖先)の一つとも言われていて、その文化・習慣には日本と共通する部分が多々あります。私の取材の旅においても、餅つき・おこわの風習、機織り・刺繍・藍染め・ろうけつ染め等による衣装制作、棚田の光景、杉の木の高床式住居 他、日本人の私にとって、とても懐かしく親しみの持てるものを多く見かけ、経験しました。そんな側面からも、“中国~アジアの少数民族”の中でも、チベット族・タイ族・トン族・アイヌ民族 等と共に、私が最も関心が高い民族でもあります。
現在の混迷する世界情勢の中、このような昔から語り継がれてきた民話には、人類の経験と英知が示唆されており、未来への希望が託されているように私は感じます。ぜひ、今の日本や中国や世界中の子供達・大人達に、この絵本を見ていただきたいと、切に願っています。
2022年は日中国交正常化50周年、
2023年は日中平和友好条約締結45周年に当たりました。また、
2025年~26年は「日中韓文化交流年」に指定されました。この絵本がまさに “虹” の如く、日中の更なる文化交流の架け橋となり、日中・・・そしてアジア~世界中の子供から青年・大人までの、平和友好・文化興隆の種となりますよう、祈念しております。
ちなみに、中国では虹の事を「彩虹(ツァイホン)」と言いますが、古代中国では「虹蜺(ホンニー)」とも称し、雄雌一対の神獣:龍になぞらえ、吉事の前兆と考えたそうです・・・。空にかかる美しい “虹” に、人々の幸福と安寧を願って・・・。
こども家庭庁
「こどもたちに読んでほしい本 - 令和6年度 こども家庭庁こども家庭審議会推薦 児童福祉文化財【特別推薦】」、こども家庭庁
「令和7年度 児童福祉文化賞 推薦作品」他、多数の推薦図書に選定。
絵本のあらすじ
昔々、中国 中南部の奥深い山地~ミャオ族の村に、刺繍(花辺=縁飾り)のとても上手な、美しく気立ての良い娘がおり、いつも他の娘達に刺し方を教えていました。ところが、王様がその噂を聞きつけて、娘をさらいに大勢の手下達を村に送りました・・・。刺繍の上手い娘と、赤い龍の織り成す、涙と感動の物語。空にかかる“虹”の由来を伝える、ミャオ族の美しい民間伝承です。中国(中華人民共和国)の少数民族・ミャオ族(苗族/中国 広西チワン族自治区)の民話。(小学校低学年~大人 向け)
原話出典
蕭甘牛(肖甘牛)採集整理「花辺姐姐(花边姐姐)」 1960年9月、月刊誌『人民中国』外文出版社・中華人民共和国。 中国民間文芸研究会主編、 貴州省民間文学工作組編『苗族民間故事選』1962年、人民文学出版社・中華人民共和国。
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🎊こども家庭庁【令和7年度 児童福祉文化賞 推薦作品】に選定されました‼🎊 
Children and Families Agency, Government of Japan “2025 Child Welfare Culture Award Recommended Works”
日本政府 儿童家庭厅【令和7年度 2025年度 儿童福利文化奖 推荐作品】选定・得奖
🌟「こどもたちに読んでほしい本」令和6年度 こども家庭庁こども家庭審議会推薦 児童福祉文化財【特別推薦】🌟
Children and Families Agency, Government of Japan “Books we want Children to read” 2024 Children and Families Agency, Children and Families Council Recommended, Child Welfare Cultural Assets [Special Recommendation]
日本政府 儿童家庭厅 儿童家庭审议会 “希望孩子们读的书” 令和6年度 2024年度 儿童家庭厅 儿童家庭审议会推荐 儿童福利文化遗产【特别推荐】
★TRC図書館流通センター「ベル通信6月(新刊急行ベル)」図書館流通センター仕入部 382号 2024年【注目の新刊】に選定されました(公益財団法人 図書館振興財団「新刊選書委員会」の意見をもとに選定)★
●大垣書店 京都本店 (京都市下京区)‐ 絵本『にじをかけたむすめ』パネル展示・第3期
〈同時開催: BL出版「世界のむかしばなし絵本」シリーズパネル展〉
場所: 大垣書店 京都本店 室町ギャラリー(京都市下京区四条通室町東入函谷鉾町78 SUINA室町1F)
展開期間: 2025年2月1日(土)~2月28日(金)〈終了〉
シリーズ最新刊 他と合わせて、私の作画絵本『にじをかけたむすめ 中国・苗族のむかしばなし』パネル展・第3期を同時開催中です~❣
2月28日まで、大垣書店 京都本店にて開催。お近くの方は、ぜひお越しいただき、拙作絵本をご覧下さいね~🥰